予約の電話で「少々お待ちください」と言われた理由、想像と違いすぎた
2026/05/04

店の入口に貼られていた一枚の手書きの紙を見て、思わず足が止まった。

そこには、こう書かれていた。

「当店では、御予約のお電話に対して、超人気店っぽく思われたい一心から『少々お待ち下さい。只今予約状況を確認いたします。』などと言ったりしますが、実際はメモ用紙を取りに行っているだけで、ほとんど御予約可能です。」

……正直、笑ってしまった。

たしかに予約の電話って、あの一言で急に空気が変わる。

「少々お待ちください」

そう言われた瞬間、こっちは勝手にいろいろ想像してしまう。

あ、もう満席かも。
やっぱり人気店だから厳しいのかな。
もしかして、ギリギリ一席だけ空いてる感じ?
いや、週末だし無理かもしれない。

電話口で返事を待つ数秒間、なぜか少しだけ緊張する。

しかも店員さんが戻ってきて、

「お待たせいたしました」

なんて言うと、もう完全に“審査結果発表”みたいな気分になる。

「どうか空いてますように……」

そんな気持ちで待っているのに、実際の裏側は、ただメモ用紙を探しに行っていただけ。

この正直さ、嫌いになれるわけがない。

普通なら、店側はこういうことを隠したがると思う。

「人気店に見せたい」
「予約が取りにくい雰囲気を出したい」
「お客さんに特別感を持ってもらいたい」

商売としては、そういう演出もたぶん大事なのだろう。

でもこの店は、それを自分からバラしている。

しかも最後には、

「スタッフのかっこつけたい気持ちを御理解いただいた上で、バンバン御予約下さいませ。

この一文。

もう、ずるい。

ちゃんとふざけているのに、ちゃんと伝えたいことは伝わる。

「予約できます」
「遠慮しないでください」
「週末のピーク時は本当に満席の時もあります」
「でも基本的には来てほしいです」

この全部を、堅苦しくなく、押しつけがましくなく、笑いに変えて伝えている。

もしこれが普通の貼り紙だったら、きっとこうなる。

「ご予約承っております。お気軽にお問い合わせください。」

悪くはない。

でも、多分誰も写真を撮らない。
誰も足を止めない。
誰も誰かに話したくならない。

ところがこの貼り紙は違う。

「少々お待ちください」の裏側を、ここまで人間くさく見せられたら、こっちまで電話したくなる。

むしろ予約の電話をして、店員さんにそれを言われた瞬間、

「あ、今メモ用紙取りに行ってるんだな」

と思って、笑ってしまいそうだ。

たぶんこの店は、料理だけじゃなくて、こういう空気も含めて愛されているんだと思う。

完璧な接客より、少し抜けているくらいの正直さ。
かっこつけているのに、かっこつけきれない可愛さ。
お客さんとの距離を、ほんの少しだけ近づける言葉選び。

こういうお店って、入る前からもう少し安心する。

「ちゃんとしてます!」と強く言われるより、

「ちょっとかっこつけてます、すみません」
と言われるほうが、なぜか信用できる時がある。

商売って、不思議だ。

きれいな言葉だけが、人を動かすわけじゃない。
丁寧すぎる説明だけが、安心を作るわけでもない。

たった一枚の手書きの紙で、

「あ、この店、なんか良さそう」

と思わせることがある。

この貼り紙を見てから、予約の電話で「少々お待ちください」と言われるたびに、少しだけ世界が優しく見える気がした。

もしかしたら、電話の向こうでは本当に予約表を確認しているのかもしれない。

でも、もしかしたら。

店員さんが小走りでメモ用紙を探しているだけかもしれない。

AD
記事
画像集
速報